電磁波の健康影響を示す多数の研究

様々な臓器の異常

 

電磁波被曝により、不整脈、心筋梗塞、慢性閉塞性肺疾患、ぜんそく、糖尿病、自律神経の乱れ、肝機能低下、腎機能低下、白内障などが増加することが示されています。

近年、不整脈、慢性閉塞性肺疾患、ぜんそく、糖尿病、肝疾患、腎疾患、白内障は増加傾向にあります。

電磁波はこれらの傾向を生み出している要因の一つとして疑われます。

近年の傾向

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不整脈・心筋梗塞

職場からの電磁波被曝により、不整脈、心筋梗塞などの心臓の病気が増加したことを示す研究を紹介します。

不整脈の中では特に徐脈の増加がみられました。徐脈は不整脈の一種で、心拍数が1分間に60回未満と異常に遅い状態を指します。

研究紹介

Savitz et al. 1999

アメリカの大手電力会社5社の男性従業員について、職場での低周波電磁波の累積被爆量が多くなるほど、不整脈と急性心筋梗塞での死亡が増加しました。

特に過去20年以前の累積被曝量で見た場合に、それが顕著でした。

不整脈の増加

不整脈での死亡率が、職場での低周波電磁波の過去20年以前の累積被曝量が上位20%で3倍になりました。

全期間過去20年以前
急性心筋梗塞の増加

急性心筋梗塞での死亡率が、職場での低周波電磁波の過去20年以前の累積被曝量が上位20%で5割増加しました。

全期間過去20年以前
Tikhonova 2003

ロシアの民間航空機レーダー追尾システムの職員について、高周波電磁波、特にミリ波の職業被曝を受けていると、心血管疾患が増加しました。

特に30-39歳の若い人の間で、それが顕著でした。

心血管疾患の増加

心血管疾患のオッズが、ミリ波の被曝で7倍になりました。

全年齢30-39歳

また心血管疾患の内、動脈性高血圧と虚血性心疾患の増加がみられました。代表的な虚血性心疾患として、心筋梗塞がよく知られています。

動脈性高血圧の増加

動脈性高血圧のオッズが、ミリ波の被曝で2倍になりました。

虚血性心疾患の増加

虚血性心疾患のオッズが、ミリ波の被曝で8倍になりました。

Sahl 2002

カリフォルニア州のある電力会社の男性従業員について、職場での低周波電磁波の累積被曝量がより多いと、急性心筋梗塞での死亡が増加しました。

特に直近5年の累積被曝量で見た場合に、それが顕著でした。

また慢性閉塞性肺疾患の増加もみられましたが、これについては慢性閉塞性肺疾患・ぜんそくの所で紹介しています。

急性心筋梗塞の増加

急性心筋梗塞の死亡率が、職場での低周波電磁波の直近5年の累積被爆量が70-89%の中間層で3倍になりました。

全期間直近5年
Hakansson 2003

スウェーデンの双子の名簿に登録された大人について、職場の低周波電磁波がより強いと、不整脈での死亡が増加しました。

特に65歳以下の比較的若い人の間で、それが顕著でした。

また、急性心筋梗塞での死亡の幾分かの増加もみられました。

不整脈の増加

不整脈の死亡リスクが、職場の低周波電磁波が0.3μT以上で3倍になりました。

全年齢65歳以下
急性心筋梗塞の増加

急性心筋梗塞の死亡リスクが、職場の低周波電磁波が0.3μT以上で3割増加しました。

Wilén et al. 2003

スウェーデンの9つの工場の従業員について、RF sealerと呼ばれる電磁波を発する産業機械の利用により、心拍数が減少し、徐脈が増加しました。

RF sealerは、防水シート、テント、雨具、カバーのsealingに使用され、使用者は平均2.6 mW/cm2のかなり強い高周波電磁波を被曝していました。

心拍数の減少

心拍数が、RF Sealerの利用で1割減少しました。

徐脈の増加

徐脈の発生回数が、RF Sealerの利用で6割増加しました。

また、電磁波過敏症の増加も確認されました。

電磁波過敏症の増加

電磁波過敏症の訴えの報告が、RF Sealerの利用で増加しました。

症状 1症状 2
Déoux et al. 1997

フランスの47歳の女性の症例報告です。

女性は変圧器の真上のオフィスで勤務しており、平均23μTの低周波電磁波を週に40時間、22か月間被曝していました。

勤務期間中、女性の心拍数の低下と徐脈がみられました。

被曝終結の後、心拍数は回復しましたが、元の水準まで戻ることはありませんでした。

心拍数の減少

勤務中の変圧器の電磁波被曝で心拍数が激減し、徐脈が発生しました。

心拍数が元の水準まで戻らなかったことから、心臓に何らかの不可逆の損傷を負ってしまった可能性があります。

その他の観察結果として、心室性期外収縮の多発がみられました。心室性期外収縮が多発すると致死的な不整脈へとつながることがあります。

Kilicalp et al. 2009

局所SAR 0.95 W/kgの携帯電話を飼育ケージの床下に設置して、1日20分通信中にし、モルモットがその電磁波を30日間被曝しました。

すると心拍数が低下し、徐脈になりました。

また抗酸化作用のある緑茶の投与は、上述の被害を抑制しました。

心拍数の減少

心拍数が、携帯電話の電磁波被曝で3割低下し、徐脈になりました。抗酸化作用のある緑茶はそれを抑えました。

また房室ブロックの診断基準となる、PR間隔の延長もみられました。

PR間隔の延長

PR間隔が、携帯電話の電磁波被曝で3倍になりました。緑茶の投与に効果はありませんでした。

心臓の損傷

次に、電磁波波被曝により、ラットの心臓の洞房結節や心筋が損傷したことを示す研究を紹介します。

心筋の細胞死

心筋細胞などの機能的な細胞が喪失し、かわりにコラーゲンなどの構造的な成分に置き換わってしまうことを、線維化 (傷跡化) といいます。(Piek et al. 2016)

心臓における線維化は、心臓の硬化とリモデリング (構造的・機能的変化) をもたらし、多くの慢性的な心疾患における主要な死因としての認識が高まっています。(Piek et al. 2016)

例えば線維化は不整脈の重要な危険因子です (Kazbanov et al. 2016)。

脈が異常に遅くなる不整脈である徐脈は、洞房結節または房室結節の伝導ブロックに起因し、多くの場合線維化が原因です。 (Verheule and Schotten 2021)

洞房結節は心臓のリズムを作りだす心筋で、天然のペースメーカーとして知られています。

そして電磁波被曝により、ラットの心筋の細胞死が増加し、洞房結節において線維化が進むことが示されています。

研究紹介

Liu et al. 2015

青年に相当する生後8週のオスラットが強さ50 mW/cm2で2.9 GHz、の高周波電磁波をパルス変調し、1日6分、12ヶ月間被曝しました。

すると心臓の洞房結節が損傷し、線維化 (傷跡化) しました。

洞房結節の損傷 (短期)
洞房結節(被曝無し)
対照群
洞房結節(被曝有り 1日目)
電磁波1日
洞房結節(被曝有り 7日目)
電磁波7日
洞房結節(被曝有り 14日目)
電磁波14日

数週間の電磁波被曝で洞房結節が損傷しました。

洞房結節の損傷 (長期)
洞房結節(被曝有り 6か月目)
電磁波6か月
洞房結節(被曝有り 9か月目)
電磁波9か月
洞房結節(被曝有り 12か月目)
電磁波1年

数か月の電磁波被曝で洞房結節が線維化 (傷跡化) しました。また洞房結節の柔組織細胞 (機能的細胞) の減少と脂肪滴の浸潤もみられました。

脂質滴の蓄積は、感染、腫瘍、その他の炎症において頻繁に観察されます。(Bozza and Viola 2010)

洞房結節の損傷 (拡大)
洞房結節の拡大図(被曝無し)
対照群
洞房結節の拡大図(被曝有り 28日目その1)
電磁波28日
洞房結節の拡大図(被曝有り 28日目その2)
電磁波28日
洞房結節の拡大図(被曝有り 28日目その3)
電磁波28日
洞房結節の拡大図(被曝有り 28日目その4)
電磁波28日
洞房結節の拡大図(被曝有り 6か月目)
電磁波6か月

数週間の電磁波被曝で洞房結節の筋原線維やミトコンドリアなどが損傷しました。

洞房結節の線維化

洞房結節のコラーゲン含有量が、電磁波被曝で4倍になりました。これは洞房結節の線維化 (傷跡化) を意味します。

Kiray et al. 2012

成体のオスラットが強さ3mTで50Hzの低周波電磁波を1日4時間、2ヶ月間被曝しました。

すると心臓において活性酸素が増加し、心筋が損傷し、細胞死が増加しました。

活性酸素の増加

脂質過酸化の指標であるマロンジアルデビドが、電磁波被曝で4倍になりました。

MDASODGSH-Px

脂質過酸化の増加と抗酸化活性の減少は活性酸素の増加を意味します。

心筋の損傷
心筋の拡大図(被曝無し1)
対照群
心筋の拡大図(被曝有り1)
電磁波
心筋の拡大図(被曝無し2)
対照群
心筋の拡大図(被曝有り2)
電磁波

電磁波被曝で心筋の筋原線維やミトコンドリアなどが損傷しました。

細胞死の増加 1
心筋(被曝無し)
対照群
心筋(被曝有り)
電磁波

電磁波被曝で心筋の細胞死が増加しました。

細胞死の増加 2

心筋の細胞死のスコアが、電磁波被曝で2倍になりました。

細胞死 1細胞死 2
Türedi et al. 2014

妊娠中のラットが強さ50 μW/cm2で900MHzの高周波電磁波を1日1時間、妊娠後期の1週間被曝しました。

すると生まれた息子ラットの心臓において心筋が損傷し、細胞死が増加しました。

心筋の損傷
心筋の拡大図(被曝無し)
対照群
心筋の拡大図(被曝有り1)
電磁波
心筋の拡大図(被曝有り2)
電磁波

電磁波被曝で心筋の筋原線維やミトコンドリアなどが損傷しました。

細胞死の増加 1
心筋(被曝無し)
対照群
心筋(被曝有り)
電磁波

電磁波被曝で心筋の細胞死が増加しました。

細胞死の増加 2

心筋の細胞死の割合が、電磁波被曝で3倍になりました。

慢性閉塞性肺疾患・ぜんそく

次に、男性の職場での電磁波被曝により、慢性閉塞性肺疾患、間質性肺炎が増加したことを示す研究を紹介します。

また、妊娠中の女性の電磁波被曝で、生まれた子どものぜんそくが増加したことを示す研究も紹介します。

研究紹介

Sahl 2002

カリフォルニア州のある電力会社の男性従業員について、職場での低周波電磁波の累積被曝量がより多いと、慢性閉塞性肺疾患での死亡が増加しました。

また急性心筋梗塞の増加もみられましたが、これについては不整脈・心筋梗塞の所で紹介しています。

慢性閉塞性肺疾患の増加

慢性閉塞性肺疾患の死亡率が、職場での低周波電磁波の累積被曝量が上位30%で3倍になりました。

Milham 1985

ワシントン州の20歳以上の男性について、低周波電磁波の職業被曝を受けていると、慢性閉塞性肺疾患と間質性肺炎での死亡が増加しました。

また胃潰瘍、悪性リンパ腫、白血病での死亡の増加もみられました。

肺疾患の増加

低周波電磁波の職業被曝で、全死因のうち慢性閉塞性肺疾患が占める割合が5割増加し、間質性肺炎が占める割合が4割増加しました。

その他疾患の増加

低周波電磁波の職業被曝で、全死因のうち悪性リンパ腫・白血病が占める割合が2倍になりました。

Li 2011

サンフランシスコのベイエリアに住む、大手健康維持機構 (HMO) の妊娠中の会員について、1日平均で被曝する低周波電磁波が強くなるほど、生まれた子どものぜんそくが増加しました。

ぜんそくの増加

子どものぜんそくのハザードが、妊娠中の女性が1日平均で被曝する低周波電磁波が0.03-0.2μTで1.7倍、0.2μT超で3.5倍になりました。

ぜんそくのハザードの増加は、単位時間あたり (例:年あたり) のぜんそくの罹患率の増加を意味します。

以下のグラフは子どもの年齢別にみたぜんそくの罹患率です。

年齢別にみたぜんそくの増加

子どもが12歳の時のぜんそく罹患率が、妊娠中の女性が被曝する低周波電磁波が0.03-0.2μTで16%から26%と1.6倍、0.2μT超で46%と2.9倍になりました。

Booth et al. 2001

ニュージーランドのオークランド都市圏の15-72歳の住民について、高圧線からの電磁波が強いと、ぜんそくが増加しました。

また糖尿病の増加もみられましたが、これについては糖尿病の所で紹介しています。

ぜんそくの増加

高圧線からの低周波電磁波の強さが上位40%で、慢性疾患のオッズが2倍、ぜんそくのオッズが3倍になりました。

肺の損傷

次に、電磁波被曝により、ラットの肺が損傷し、その成長が阻害されたことを示す研究を紹介します。

また、ラットの電磁波被曝により、肺において活性酸素が増加したことを示す研究も紹介します。

肺の成長阻害

慢性閉塞性肺疾患は従来、成人喫煙者の疾患と考えられてきました。しかし、出生前の肺の成長への影響など、早期の生育上の問題が将来の慢性閉塞性肺疾患のリスクを高めるという重要な疫学的証拠があります。 (Bush 2008)

ある研究結果は、成人期における気道機能は、胎児の発育期と生後数か月で決定される可能性を示唆しました。 (Gibson and Simpson 2009)

またある研究では、7歳までにぜんそくを発症する子どもは、新生児の時に肺機能の低下と気道過敏性の増加がみられ、この肺機能低下は7歳まで進行することがわかりました。 (Bisgaard et al. 2012)

研究紹介

Yahyazadeh et al. 2021

妊娠中のラットが強さ1 mW/cm2で900MHzの高周波電磁波を妊娠全期の3週間被曝しました。

すると生まれた息子ラットの肺が損傷し、その成長が阻害されました。

また抗酸化作用のあるメラトニンの投与は、上述の被害を抑制しました。

肺の損傷
肺組織(被曝無し)
対照群
肺組織(被曝有り)
電磁波
肺組織(抗酸化)
メラトニン
肺組織の拡大図(被曝無し)
対照群
肺組織の拡大図(被曝有り)
電磁波
肺組織の拡大図(抗酸化)
メラトニン

妊娠中の電磁波被曝で息子ラットの肺の細気管支や結合組織が損傷しました。抗酸化作用のあるメラトニンはそれを抑えました。

肺の成長阻害

息子ラットの細気管支の体積が、妊娠中の電磁波被曝で6割減少しました。抗酸化作用のあるメラトニンはそれを抑えました。

細気管支肺胞肺血管
Gharib 2011

大人のオスラットが950 MHzの高周波電磁波を1日1時間、50日間被曝しました。

すると肺と心臓と血液中において活性酸素が増加し、臓器損傷の指標であるLDH (乳酸脱水素酵素) が増加しました。

また抗酸化作用のある紅茶キノコの投与は、上述の被害を抑制しました。

肺の活性酸素の増加

肺の脂質過酸化の指標であるマロンジアルデビドが、電磁波被曝で7割増加しました。抗酸化作用のある紅茶キノコはそれを抑えました。

MDAGSH-PxSOD
心臓の活性酸素の増加

心臓の脂質過酸化の指標であるマロンジアルデビドが、電磁波被曝で5割増加しました。抗酸化作用のある紅茶キノコはそれを抑えました。

MDAGSH-PxSOD
血液中の活性酸素の増加

血液中の総抗酸化能が、電磁波被曝で6割減少しました。抗酸化作用のある紅茶キノコはそれを抑えました。

脂質過酸化の増加と抗酸化活性と総抗酸化能の減少は、活性酸素の増加を意味します。

臓器損傷の増加

臓器損傷の指標であるLDH (乳酸脱水素酵素) 活性が、電磁波被曝で2割増加しました。抗酸化作用のある紅茶キノコはそれを抑えました。

Baltaci et al. 2012

大人のオスラットが強さ5μTで50Hzの低周波電磁波を1日5分、隔日で6か月被曝しました。

すると肺と肝臓において活性酸素が増加しました。

また抗酸化作用のある亜鉛の投与は、上述の被害を抑制しました。

活性酸素の増加

脂質過酸化の指標であるマロンジアルデビドが、電磁波被曝で4倍になりました。抗酸化作用のある亜鉛はそれを抑えました。

肝臓

脂質過酸化の増加は活性酸素の増加を意味します。

糖尿病

次に、自宅や携帯基地局からの電磁波被曝により、糖尿病が増加したことを示す研究を紹介します。

研究紹介

Booth et al. 2001

ニュージーランドのオークランド都市圏の15-72歳の住民について、高圧線からの電磁波が強いと、糖尿病が増加しました。

またぜんそくの増加もみられましたが、これについては慢性閉塞性肺疾患・ぜんそくの所で紹介しています。

糖尿病の増加

高圧線からの低周波電磁波の強さが上位40%で、慢性疾患のオッズが2倍、糖尿病のオッズが7倍になりました。

Meo et al. 2015

サウジアラビアのリヤドにある2つの学校の12-17歳の男子生徒について、携帯基地局からの電磁波が強い学校に通学していると、肥満が増加し、血糖値、糖尿病予備軍がやや増加しました。

高周波電磁波の強さは、強い学校で0.01μW/cm2、弱い学校で0.002μW/cm2でした。

両学校とも電磁波はそこまで強くなく、学校同士の差も小さいという点に留意する必要があります。

肥満の増加

肥満指数 (BMI) が、携帯基地局からの電磁波が強い学校に通学で1.4ポイント増加しました。

血糖値の増加

血糖値が、携帯基地局からの電磁波が強い学校に通学で0.1ポイント増加しました。

糖尿病予備軍の増加

糖尿病予備軍の割合が、携帯基地局からの電磁波が強い学校に通学で1割増加しました。

膵臓の損傷

次に、携帯電話やWi-Fiなどからの電磁波被曝で、ラットの膵臓のランゲルハンス島が損傷し、インスリンが減少、血糖値が上昇することを示した実験を紹介します。

ランゲルハンス島の損傷

糖尿病に深くかかわりのある器官が膵臓です。膵臓の主な役割は、膵液と呼ばれる消化液の分泌と、血糖値を調節するホルモンの分泌の2つになります。

膵臓には、ランゲルハンス島と呼ばれるホルモンを分泌する細胞の集まりがあちこちに点在しています。

代表的な細胞としては、α細胞と呼ばれる、血糖値を上げるグルカゴンを分泌する細胞や、血糖値を下げるインスリンを分泌するβ細胞などがあります。

ランゲルハンス細胞の構成は、β細胞が7割程度、α細胞が2割程度と、インスリンを分泌するβ細胞が最も大きな割合を占めてします。

また、血糖値を上げるホルモンはグルカゴンの他、コルチゾールやアドレナリンなどがありますが、血糖値を下げるホルモンはインスリンのみとなります。

したがって、膵臓においてランゲルハンス島が損傷して細胞量が減少すると、インスリンの分泌量が減少し、血糖値の上昇につながり、結果的に糖尿病のリスクが上昇するものと考えられます。

実際、1型糖尿病では診断時にβ細胞量が70-80%、2型では25-50%も減少しています。(Cnop et al. 2005)

そして電磁波被曝により、ラットのランゲルハンス島が損傷して細胞量が減少し、インスリン分泌量が減少し、血糖値が上昇することが示されています。

インスリン抵抗性

血糖値が上昇すると、膵臓からインスリンが分泌されます。次いで肝臓や筋肉、脂肪細胞がインスリンを受け取ると、血液中のブドウ糖の取り込みを開始します。これにより血糖値が減少します。

一方、血糖値が上昇してインスリンが分泌されたのにも関わらず、肝臓や筋肉、脂肪細胞でブドウ糖の取り込みが行われず、血糖値が上昇したままになる時があります。

これをインスリン抵抗性と呼びます。

インスリン抵抗性

インスリン抵抗性はⅡ型糖尿病の患者の方でよくみられることが知られています。

ある研究は電磁波被曝によりラットのインスリン抵抗性が増加したことを示しました。1件の研究だけでは明らかに証拠不十分ですが、以下の仕組みの点からある程度の裏付けが可能です。

電磁波によるインスリン抵抗性の仕組み

筋肉や肝臓、脂肪細胞がインスリンを受け取ると、ブドウ糖を輸送するGLUT4と呼ばれるタンパク質が活性化し、細胞膜へと移ります。

するとブドウ糖はこのGLUT4を経由して細胞内に取り込まれます。

しかし活性酸素が増加すると、インスリンが分泌されたにも関わらず、このGLUT4が非活性化したままになってしまい、結果血糖値は上昇したままとなり、インスリン抵抗性が発生します。(Tsuruzoe et al. 2006, Mukherjee et al. 2013)

活性酸素によるインスリン抵抗性の仕組み

そして電磁波が活性酸素を増加させることは、数多くの研究によって示されています。

したがって電磁波被曝により活性酸素が増加すると、ブドウ糖の輸送体であるGLUT4が機能しなくなり、インスリン抵抗性が発生するものと考えられます。

研究紹介

Khaki et al. 2015

青年に相当する生後12週のラットが強さ3mTで50Hzの低周波電磁波を1日4時間、6週間被曝しました。

すると膵臓のランゲルハンス島が大幅に縮小し、血中インスリン濃度が低下しました。

ランゲルハンス島の縮小 1
ランゲルハンス島(被曝無し)
対照群
ランゲルハンス島(被曝有り)
電磁波

電磁波被曝でランゲルハンス島が大幅に縮小しました。

ランゲルハンス島の縮小 2

ランゲルハンス島の面積が、電磁波被曝で7割減少しました。

面積周辺長
血中インスリン濃度の減少

血中インスリン濃度が、電磁波被曝で4割減少しました。

Mortazavi et al. 2016

局所SAR 1.15 W/kgの携帯電話を設置して1日6時間会話中にし、大人のメスラットが5cmの距離でその電磁波を7日間被曝しました。

すると膵臓のランゲルハンス島が損傷し、血中インスリン濃度が低下しました。

ランゲルハンス島の損傷
ランゲルハンス島(被曝無し)
対照群
ランゲルハンス島(被曝有り)
携帯電話

携帯電話の電磁波被曝でランゲルハンス島のほとんどの細胞が解離しました。

血中インスリン濃度の減少

血中インスリン濃度が、携帯電話の電磁波被曝で5割減少しました。

Bahaoddini et al. 2008

青年に相当する生後12週のオスラットが強さ500μTで50Hzの低周波電磁波を1日10時間、2か月間被曝しました。

すると血中インスリン濃度が低下し、血糖値が増加しました。

血中インスリン濃度の減少

血中インスリン濃度が、電磁波被曝で4割減少しました。

血糖値の増加

血糖値が、電磁波被曝で2割増加しました。

Masoumi et al. 2018

Wi-Fi-ルータを設置して1日4時間データ通信中にし、青年に相当する生後12週のオスラットが30cmの距離でその電磁波を45日間被曝しました。

すると膵臓において活性酸素が増加し、ランゲルハンス島のインスリン分泌能が低下しました。

また、ブドウ糖負荷試験を行ったところ、血中インスリン濃度の低下と血糖値の増加が確認されました。

活性酸素の増加

脂質過酸化の指標であるマロンジアルデビドが、Wi-Fiの電磁波被曝で3倍になりました。

MDAGSHSODGSH-Px

脂質過酸化の増加と抗酸化活性の減少は活性酸素の増加を意味します。

続いてランゲルハンス島のインスリン分泌能の結果です。

これはマウスから摘出したランゲルハンス島に、低濃度あるいは高濃度のブドウ糖を曝した時の、インスリン分泌量を比較したものです。

インスリン分泌能の低下

ランゲルハンス島のインスリン分泌能が、Wi-Fiの電磁波被曝で低下しました。インスリン分泌量が、低濃度のブドウ糖への曝露で2割、高濃度で5割減少しました。

続いてブドウ糖負荷試験の結果です。

これは空腹時のマウスの腹腔内にブドウ糖を注射した後の、血中インスリン濃度と血糖値の時間推移と、その面積にあたるAUC (Area Under the Curve) を比較したものです。

血中インスリン濃度の減少

血中インスリン濃度が、Wi-Fiの電磁波被曝で減少しました。

時間推移AUC
血糖値の増加

血糖値が、Wi-Fiの電磁波被曝で増加しました。

時間推移AUC

ブドウ糖負荷試験は人において糖尿病かどうかを調べるための試験です。

ラットにおいては明確な基準はありませんが、Wi-Fiからの電磁波被曝により糖尿病のリスクが高まったことは間違いないといえます。

Meo and Rubeaan 2013

携帯電話を飼育ケージの中央に設置して、1日15-60分着信中にし、青年に相当する生後60日のオスラットがその電磁波を3か月間被曝しました。

すると空腹時の血中インスリン濃度と血糖値が双方ともに増加し、結果インスリン抵抗指数が増加しました。

血中インスリン濃度の増加

血中インスリン濃度が、携帯電話の電磁波の1日30-45分の被曝で2割増、45-60分の被曝で1割増加しました。

血糖値の増加

血糖値が、携帯電話の電磁波の1日30-45分の被曝で6割増、45-60分の被曝で7割増加しました。

インスリン抵抗性指数の増加

インスリン抵抗指数が、携帯電話の電磁波の1日30-45分の被曝で9割増、45-60分の被曝で8割増加しました。

自律神経の乱れ

次に、高圧線や電波塔、携帯電話などからの電磁波被曝により、自律神経系のうち、交感神経の活動が増加し、副交感神経の活動が低下することを示した研究を紹介します。

また、新生児の電化製品からの電磁波被曝により、交感神経の活動が増加し、副交感神経の活動が低下することを示した研究を紹介します。

自律神経とは何か?

自律神経とは、脳や脊髄からのびて体中に分布する末梢神経のことで、自分の意志とは無関係に体の機能を調節する神経となります。

自律神経には、昼間の活動時に活発になる交感神経と、夜間の休息時に活発になる副交感神経の主に2種類存在します。

交感神経と副交感神経はそれぞれ体の各臓器に働きかけ、多くの臓器において相反する作用をもたらします。

後述しますが自律神経の乱れ、特に交感神経の活動の増加と副交感神経の活動の低下は、様々な疾患と相関があります。

心拍変動による自律神経の評価

心拍変動とは何か?

心電図などで心拍を測定すると、その心拍の間隔は、810ミリ秒、830ミリ秒、790ミリ秒、835ミリ秒、といったように、時間とともに心拍の間隔が変動していることが知られています。

(Nyxoから引用・加筆)

そしてこの心拍の間隔は、以下のグラフのように周期的に変動しています。

心拍変動
(データはEbrahimzadeh et al. 2014から引用)

この心拍間隔の周期的な変動のことを心拍変動と呼び、心拍変動の様々なパラメータによって自律神経を評価することができます。

心拍変動のパラメータ (時間領域)

心拍変動のパラメータには以下のようなものがあります。

SDNN

心拍間隔の標準偏差です。つまり心拍間隔の変動の大きさを表しています。

心拍変動のグローバルな指標となり、交感神経と副交感神経の両方による心拍数の調節を反映しています。(Xhyheri et al. 2012)

SDNNの値が50ms未満の患者は不健康、50~100msの患者は健康が損なわれている、100ms以上の患者は健康、と分類されます。(Shaffer and Ginsberg 2017)

RMSSD

隣接する心拍間隔の差の二乗平均平方根です。

副交感神経活動の指標で、RMSSDが25 ms以下で副交感神経の活動が損なわれているとみなされます。(Xhyheri et al. 2012)

PNN50

隣接する心拍間隔に50 ms以上の差がある割合です。

副交感神経活動の指標で、PNN50が3%未満で副交感神経の活動が損なわれているとみなされます。(Xhyheri et al. 2012)

心拍変動の周波数成分

心拍変動は、素早く変動している、つまり周波数が高いものや、ゆっくり変動している、つまり周波数が低いものなど、複数の周波数成分で構成されています。

心拍変動は複数の周波数成分で構成される
(データはEbrahimzadeh et al. 2014から引用)

心拍変動の周波数ごとのパワーを図示すると、以下のようになります。

心拍変動のパワースペクトル密度
(データはEbrahimzadeh et al. 2014から引用)

この周波数領域の心拍変動のパラメータによっても、自律神経を評価することができます。

心拍変動のパラメータ (周波数領域)

この周波数領域の心拍変動のパラメータには以下のようなものがあります。

HF

0.15~0.4 Hzの高周波領域で、副交感神経の活性化の指標です。(Xhyheri et al. 2012)

LF

0.04~0.15Hzの低周波領域で、交感神経の活性化の指標、あるいは自律神経のバランスの指標と考えられています。(Xhyheri et al. 2012)

VLF

0.0033~0.04Hzの超低周波領域で、自律神経との関係は今のところ不明です。(Xhyheri et al. 2012)

LF/HF比

交感神経と副交感神経の活動の相互作用の指標で、低いと副交感神経優位を、高いと交感神経優位を指し示します。(Xhyheri et al. 2012)

心拍変動の低下と自律神経の異常

全体として、心拍変動の値が低いということは、相対的に交感神経が優位であるということであり、これは交感神経の活動が高いか、副交感神経の活動が低いことが原因であると考えられます。(Xhyheri et al. 2012)

研究紹介

Bortkiewicz et al. 2006

ポーランドの4つの高圧変電所と4つのradio link stations(※)のサービス作業員について、高圧変電所で仕事をしていると、心拍変動が変化しました。

電磁波被曝が無い職場です。

それは交感神経の活動が増加し、相対的に交感神経が優位になったことを示しました。

高圧変電所の労働者は、1.4–38.9 μTの低周波電磁波の被曝を受けていました。

SDNNの減少

SDNN<27msの割合が、高圧変電所での仕事で3倍になりました。交感神経が相対的に優位になったといえます。

SDNN%SDNN<27ms

年齢、喫煙、飲酒習慣で調整。

LFの増加

LFが、高圧変電所での仕事で1割増加しました。交感神経の活動の増加が示唆されます。

HFに変化なし

高圧変電所での仕事でHFに変化はありませんでした。副交感神経の活動に大きな影響は無かったといえます。

LF/HF比の増加

LF/HF比>1の割合が、高圧変電所での仕事で4割増加しました。交換神経が相対的に優位になったといえます。

LF/HF比%LF/HF比>1
VLFの増加

VLFが、高圧変電所での仕事で2割増加しました。

続いて、低周波電磁波の強さで4グループに分けた時の結果です。

電磁波の強さ別にみた心拍変動

SDNNが、被曝する電磁波が強くなるほど低下しました。交感神経が相対的に優位になったといえます。

SDNNLFVLFLF/HF比

また従業員の血圧が上昇しました。

血圧の増加

最低血圧と最高血圧が、高圧変電所での仕事で増加しました。

Bortkiewicz et al. 2012

ポーランドの4つの放送局と4つのradio link stations(※)のサービス作業員について、放送局で仕事をしていると、心拍変動が変化しました。

電磁波被曝が無い職場です。

それは交感神経の活動が増加し、副交感神経の活動が低下し、相対的に交感神経が優位になったことを示しました。

高周波電磁波の強さは、弱い被曝で平均0.024 μW/cm2、強い被曝で平均1.9 μW/cm2でした。(※)

空間インピーダンス377Ωとして、論文記載の電界の強さから計算。

SDNNの減少

SDNNが、放送局での仕事で3割減少しました。交感神経が相対的に優位になったといえます。

SDNN%SDNN<27ms

論文に無被曝群のデータの記載が無く、増加度のみ記載有り。

LFの増加

LFが、放送局での仕事で2割増加しました。交感神経の活動の増加が示唆されます。

HFの減少

HFが、放送局での仕事で1割減少しました。副交感神経の活動が低下したといえます。

LF/HF比の増加

LF/HF比が、放送局での仕事で4割増加しました。交感神経が相対的に優位になったといえます。

VLFの増加

VLFが、放送局での仕事で1割増加しました。

Bellieni et al. 2007

保育器は主に早産児や病気の赤ちゃんを保護するために使用されていますが、強い電磁波を発しており、赤ちゃんにどのような影響が及ぶのかはわかっていません。

そこで保育器の発する電磁波の新生児の自律神経系の活動への影響を調べたのが本研究です。

イタリアのシエーナの病院で保育器の中にいる新生児について、心拍変動を測定し、続いて保育器を5分間オフにして心拍変動を測定し、再び保育器をオンにして心拍変動を測定しました。

すると、保育器をオフにした時と比べ、保育器をオンにした時は、新生児の副交感神経の活動が低下し、相対的に交感神経が優位になったことが示されました。

保育器は平均0.89 μTの低周波電磁波を発していました。

HFの減少

HFが、保育器の電磁波被曝で4-5割減少しました。副交感神経の活動が低下したといえます。

LF/HF比の増加

LF/HF比が、保育器の電磁波被曝で3割増加しました。交感神経が相対的に優位になったといえます。

Baldi et al. 2006

オーストラリアの30-65歳の男性の実験参加者が座った状態で、3Hzでパルス変調した50Hzの低周波電磁波を20分間被曝しました。そして20分間の休憩後に、再度20分間被曝しました。

すると心拍変動が変化し、それは相対的に交感神経が優位になったことを示しました。

電磁波被曝の時間が長くなるほど、それが顕著になりました。

電磁波発信機は椅子の下に配置され、その強さは頭部で1.57μT、背中で4.21μT、臀部で20.9μTでした。

LF/HF比の増加

LF/HF比が、電磁波の被曝時間が長くなるほど増加しました。交感神経が相対的に優位になったといえます。

この研究はパイロットスタディで実験参加者が5人と少ないため、統計的データ解析が実施されていません。データは5人の平均値を論文記載データから独自に計算したものです。

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自律神経の乱れの結末

電磁波被曝により心拍変動が変化しました。

それらは主に交感神経の活動の増加と、副交感神経の活動の低下と、相対的な交感神経が優位といった、自律神経の乱れを示しました。

そして自律神経の乱れは様々な疾患との相関が知られてします。

心臓突然死

心臓突然死を起こしやすい患者の方において、心臓の副交感神経機能が低下しています。(Singer et al. 1988)

心臓虚血時における心室細動では、交感神経の活性化は不整脈を促進しますが、副交感神経の活性化は不整脈を抑制します。(Shen and Zipes 2014)。

心室細動とは致死的な不整脈で、心臓突然死の原因の一つです。

乳幼児突然死症候群

将来の乳幼児突然死症候群の犠牲者では、対照乳児に比べてHFが有意に低く、LF/HF比が高いことが示されました。(Franco et al. 1999)

つまり、交感神経活動の増加と副交感神経活動の低下は乳幼児突然死症候群の危険因子です。

糖尿病

交感神経の活動の増加と副交感神経の活動の低下は、膵臓でのインスリンの分泌を抑制し、肝臓でのブドウ糖の放出を促進し、副腎ホルモンの分泌を促進します。

これらの要因すべては血糖値の上昇につながりますので、糖尿病の原因となりえます。

実際、副交感神経の活動の低下が糖尿病患者を対象とした研究で観察されており、集団ベースの研究でも、非糖尿病患者に比べて、糖尿病患者は副交感神経の活動が有意に低いことが確認されています。 (Liao et al. 1995)

うつ病

また、自律神経の乱れはうつ病に関与していることが知られています。

大うつ病の患者の方は、対照群と比べて全体的に交感神経優位で、副交感神経の活動は低下していることが示されました。(Koschke et al. 2009)

不安障害や抑うつ障害の既往歴は、副交感神経の活動の低下と関連していることが示されました。(Jarrett et al. 2003)

自律神経の異常と様々な疾患

従って電磁波被曝による自律神経の乱れ、つまり交感神経の活動の増加と副交感神経の活動の低下は、様々な疾患へつながるものと考えられます。

肝機能低下・腎機能低下

次に、職場や携帯基地局からの電磁波被曝により、男性と少年の肝機能と腎機能の血液検査の結果が悪化したことを示す研究を紹介します。

また、携帯電話などからの電磁波被曝により、マウスの肝機能と腎機能の血液検査の結果が悪化したことを示す研究も紹介します。

これらの結果は、肝機能と腎機能の低下を示唆します。

肝機能と腎機能の血液検査

肝機能を評価する血液検査にはALT、AST、ALP、γ-GTP、ビリルビン、アルブミン、コレステロール、トリグリセリドなどがあります。

肝機能の血液検査の項目

ALT: ALTは肝臓に存在する酵素で、タンパク質を肝細胞のエネルギーに変換する働きがあります。肝臓が損傷するとALTが血液中に放出され、値が上昇します。(Mayo Clinic)。

AST: ASTはアミノ酸の分解を助ける酵素です。ALTと同様、ASTは通常、血液中に低レベルで存在します。AST値の上昇は、肝障害、肝疾患、筋肉の損傷を意味します。(Mayo Clinic)。

ALP: ALPは肝臓と骨に存在する酵素で、タンパク質を分解するのに重要です。この酵素は骨にも存在するため、ALPの値が通常より高い場合は、胆管の閉塞などの肝臓の障害や病気、または特定の骨の病気を意味することがあります。(Mayo Clinic)。

γ-GTP: γ-GTPは血液中の酵素です。この値が通常より高い場合は、肝臓や胆管に障害がある可能性があります。この検査は特定的ではなく、肝疾患以外の病態でも上昇することがあります。(Mayo Clinic)。

アルブミンと総タンパク質: アルブミンは肝臓で作られるタンパク質の一つです。感染症に対抗したり、その他の機能を果たすために、これらのタンパク質が必要です。アルブミンや総タンパクの値が通常より低い場合は、肝障害や肝疾患の可能性があります。このような低値は、他の胃腸や腎臓に関連した疾患でもみられることがあります。(Mayo Clinic)。

ビリルビン: ビリルビンは、赤血球が分解される際に生成される物質です。ビリルビンは肝臓を通過し、便中に排泄されます。ビリルビンの濃度が高いと、肝臓の障害や病気を意味することがあります。また、肝管の閉塞やある種の貧血などの状態でも、ビリルビンが上昇することがあります。(Mayo Clinic)。

コレステロール: 肝臓の重要な機能は、体内でコレステロールを生成し、除去することです。コレステロールが注目されるのは、そのほとんどが健康に害を及ぼす可能性について述べている場合です。しかし、コレステロールはホルモン、ビタミンD、消化酵素の生成に必要です。(Healthline)。
肝疾患のほか、甲状腺機能低下、悪性貧血、敗血症、吸収不良などがコレステロール低下の原因になります。(Healthline)。

トリグリセリド: トリグリセリドは脂肪の科学用語です。肝臓病のほか、Ⅱ型糖尿病、甲状腺機能低下、腎臓病、肥満などがトリグリセリドを増加させます。(SelfDeCode)。

腎機能を評価する血液検査には尿素窒素、クレアチニン、尿酸などがあります。

腎機能の血液検査の項目

尿素窒素: 尿素窒素は老廃物です。食べたものに含まれるタンパク質が体内で分解される際に発生します。尿素窒素は肝臓で生成され、血液を通じて腎臓に移動し、腎臓で濾過されて血液から排出されます。尿素窒素は尿を通じて体外に排出されます。 (Cleveland Cinic)。
血液中の尿素窒素が多すぎる場合は、腎臓が尿素窒素を適切にろ過していません。腎臓の健康に影響を及ぼす病気があるかもしれません。(Cleveland Cinic)。

クレアチニン: クレアチニンは、筋肉でエネルギーを生産する過程で残った化学化合物です。健康な腎臓はクレアチニンを血液から濾過します。クレアチニンは老廃物として尿として体外に排出されます。クレアチニンの濃度が上昇すると、腎機能が低下している可能性があります。(Mayo Clinic)。

尿酸: 尿酸は、プリン体と呼ばれる有機化合物を含む食品を体内で分解する際に生成される化学物質です。尿酸のほとんどは血液に溶け、腎臓で濾過され、尿として排出されます。(Healthline)。
急性腎不全などの腎臓疾患のほか、尿路結石、がん、糖尿病、痛風、敗血症、吸収不良などが尿酸値を上昇させます。(Healthline)。

研究紹介

Liu et al. 2013

自動車産業のプレス加工作業場と溶接作業場で働く20-40歳の男性労働者について、溶接工場で働いていると肝機能の血液検査の結果が悪化しました。

これらの結果は肝機能の低下を示唆します。

低周波電磁波の強さは、プレス作業場で0.07 μT、溶接作業場で0.51 μTでした。

肝機能の血液検査の項目

ALTが、電磁波の強い溶接作業場に勤務で3割増加しました。ALTの高値は肝機能の低下を示唆します。

ALTASTALPGGT総ビリルビン直接ビリルビンアルブミン

また心電図の異常や、脱毛の増加もみられました。

心電図の異常の増加

心電図の異常が、電磁波の強い溶接作業場に勤務で4倍になりました。

脱毛の増加

脱毛の報告が、電磁波の強い溶接作業場に勤務で4割増加しました。

Aziz et al. 2017

パレスチナのガザ地区カーン・ユニスに住む6-12歳の少年について、携帯基地局の近くに長期間住んでいると、腎機能と肝機能の血液検査の結果が悪化しました。

これらの結果は腎機能と肝機能の低下を示唆します。

また抗酸化作用のあるオリーブオイルの投与は、腎臓において保護作用がみられましたが、肝臓においては保護作用と逆効果の双方がみられました。

腎機能の血液検査の項目

少年の尿素窒素が、携帯基地局の100-150m以内に5年以上住んでいると、2割増加しました。尿素窒素の高値は腎機能の低下を示唆します。抗酸化作用のあるオリーブオイルはそれを抑えました。

尿素窒素クレアチニン尿酸
肝機能の血液検査の項目

少年のALTが、携帯基地局の100-150m以内に5年以上住んでいると、1割増加しました。ALTの高値は肝機能の低下を示唆します。オリーブオイルの投与は逆効果でした。

ALTASTALPビリルビン
Peighambarzadeh and Tavana 2017

携帯電話を1日4時間会話中にし、子どもに相当する生後1か月のマウスがその電磁波を20日か40日間被曝しました。

すると被曝日数が長くなるほど、腎機能と肝機能の血液検査の結果が悪化しました。

これらの結果は肝機能と腎機能の低下を示唆します。

肝機能の血液検査の項目

ALTが、携帯電話の電磁波の40日の被曝で1割増加しました。ALTの高値は肝機能の低下を示唆します。

ALTASTALPアルブミンコレステロール
腎機能の血液検査の項目

尿素窒素が、携帯電話の電磁波の40日の被曝で4割増加しました。尿素窒素の高値は腎機能の低下を示唆します。

尿素窒素クレアチニン
Shoorei et al. 2018

子どもに相当する生後3-4週のマウスが強さ3mTで50Hzの低周波電磁波を1日4時間、2か月間被曝しました。

すると肝臓で活性酸素が増加し、肝機能の血液検査の結果が悪化しました。

これらの結果は肝機能の低下を示唆します。

また抗酸化作用のあるビタミンEの投与は上述の被害を抑えました。

活性酸素の増加

脂質過酸化の指標であるマロンジアルデビドが、電磁波被曝で3割増加しました。抗酸化作用のあるビタミンEはそれを抑えました。

MDASODGSH-PxTAC

脂質過酸化の増加と抗酸化活性と総抗酸化能の減少は活性酸素の増加を意味します。

肝機能の血液検査の項目

ALPが、電磁波被曝で4倍になりました。ALPの高値は肝機能の低下を示唆します。抗酸化作用のあるビタミンEはそれを抑えました。

ALPALTASTHDLLDL

肝臓と腎臓の損傷

次に、携帯電話などからの電磁波被曝により、ラットやマウスの肝臓、腎臓が損傷したことを示す研究を紹介します。

研究紹介

TOPAL et al. 2015

妊娠中のラットが強さ54 μW/cm2で900MHzの高周波電磁波を1日1時間、妊娠後期の1週間被曝しました。

すると生まれた息子ラットの肝臓で活性酸素が増加し、肝臓が損傷し、肝細胞が壊死しました。

活性酸素の増加

息子ラットの脂質過酸化の指標であるマロンジアルデビドが、妊娠中の電磁波被曝で4割増加しました。

MDAGSHSOD

脂質過酸化の増加と抗酸化活性の減少は活性酸素の増加を意味します。

肝臓の損傷
肝臓(被曝無し)
対照群
肝臓(被曝有り)
電磁波

妊娠中の電磁波被曝で息子ラットの肝臓に水腫性変性が発生しました。

細胞膨張は、ナトリウムイオンとともに水分が流入することから、水腫性変性とも呼ばれます。もし止めなければ、急性細胞膨張は溶解(細胞膜の破壊)を引き起こし、細胞を死に至らしめます。 (Miller and Zachary 2017)

肝臓の損傷 (拡大図)
肝臓の拡大図(被曝無し1)
対照群
肝臓の拡大図(被曝無し2)
対照群
肝臓の拡大図(被曝有り1)
電磁波
肝臓の拡大図(被曝有り2)
電磁波
肝臓の拡大図(被曝有り3)
電磁波
肝臓の拡大図(被曝有り4)
電磁波

妊娠中の電磁波被曝で息子ラットの肝臓の細胞が損傷し、肝細胞が断片化して壊死しました。

Bedir et al. 2018

青年に相当する生後16-20週のラットが、2100MHzの高周波電磁波を全身平均SAR 0.024 W/kgで1日6-12時間、30日間被曝しました。

すると腎機能の血液検査の結果が悪化し、腎臓で活性酸素が増加し、腎臓で細胞死が増加し、腎臓が損傷し、尿細管が変性・壊死しました。

尿細管は原尿から水分や必要な物質を再吸収する組織です。

腎機能の血液検査の項目

尿素窒素が、1日12時間の電磁波被曝で1割増加しました。尿素窒素の高値は腎機能の低下を示唆します。

尿素窒素クレアチニン
活性酸素の増加

脂質過酸化の指標であるマロンジアルデビドが、1日12時間の電磁波被曝で2割増加しました。

MDAGSH

脂質過酸化の増加と抗酸化活性の減少は活性酸素の増加を意味します。

細胞死の増加 1
腎臓4(被曝無し)
対照群
腎臓4(1日6時間の被曝)
電磁波6h
腎臓4(1日12時間の被曝)
電磁波12h

電磁波被曝で腎臓で細胞死が増加しました。

細胞死の増加 2

腎臓の細胞死のスコアが、電磁波の被曝期間が長くなるほど増加しました。

腎臓の損傷
腎臓1(被曝無し)
対照群
腎臓1(1日6時間の被曝)
電磁波6h
腎臓1(1日12時間の被曝)
電磁波12h
腎臓3(被曝無し)
対照群
腎臓3(1日6時間の被曝)
電磁波6h
腎臓3(1日12時間の被曝)
電磁波12h

電磁波被曝で腎臓の尿細管が損傷し、間質組織が線維化 (傷跡化) しました。

線維化により正常な腎臓の柔組織 (機能的部位) が破壊されることは、慢性腎臓病の患者によく見られる特徴です。(Eddy 2014)

尿細管の変性
腎臓2(被曝無し)
対照群
腎臓2(1日6時間の被曝)
電磁波6h
腎臓2(1日12時間の被曝)
電磁波12h

電磁波被曝で腎臓の尿細管が変性しました。

尿細管の壊死

尿細管壊死のスコアが、電磁波の被曝期間が長くなるほど、増加しました。

急性尿細管壊死は、尿細管の細胞損傷と細胞死を伴う病気ですが、真の細胞壊死は通常わずかです。(Hanif et al. 2023)

Hasan et al. 2021

スマホを飼育ケージの天井に設置して、1日40分か60分着信中にし、子ども・青年に相当する生後6週のオスマウスがその電磁波を60日間被曝しました。

すると腎機能の血液検査の結果が悪化し、腎臓が損傷、炎症反応が発生しました。

腎機能の血液検査の項目

クレアチニンが、スマホの1日60分の電磁波被曝で3倍になりました。クレアチニンの高値は腎機能の低下を示唆します。

腎臓の損傷
腎臓の全体像(被曝無し)
対照群
腎臓の全体像(1日40分の被曝)
スマホ40分
腎臓の全体像(1日60分の被曝)
スマホ60分

スマホの電磁波被曝で腎臓が変色しました。

腎臓の損傷と炎症反応
腎臓(被曝無し)
対照群
腎臓(1日40分の被曝)
スマホ40分
腎臓(1日60分の被曝2)
スマホ60分
腎臓(1日60分の被曝1)
スマホ60分

スマホの電磁波被曝で血管が鬱血し、免疫細胞が浸潤しました。これは腎臓における炎症反応を意味します。

Mortazavi et al. 2016

局所SAR 1.15 W/kgの携帯電話を設置して1日3時間か6時間会話中にし、大人のメスラットが5cmの距離でその電磁波を7日間被曝しました。

すると肝臓に炎症反応が発生しました。

肝臓の炎症反応
肝臓(被曝無し)
対照群
肝臓(1日3時間の被曝)
携帯電話3h
肝臓(1日6時間の被曝)
携帯電話6h

携帯電話の電磁波被曝の期間が長くなるほど、免疫細胞の浸潤が顕著になりました。これは肝臓における炎症反応を意味します。

Oktem et al. 2005

青年に相当する生後8週のラットが900MHzの高周波電磁波を1日1時間、10日間被曝しました。

すると腎臓において活性酸素が増加し、尿細管が損傷しました。

抗酸化作用のあるメラトニンの投与は上述の被害を抑制しました。

活性酸素の増加

脂質過酸化の指標であるマロンジアルデビドが、電磁波被曝で9割増加しました。抗酸化作用のあるメラトニンはそれを抑えました。

MDACATSODGSH-Px

脂質過酸化の増加と抗酸化活性の減少は活性酸素の増加を意味します。

尿細管の損傷

尿細管損傷の指標である尿中NAGが、電磁波被曝で5倍になりました。抗酸化作用のあるメラトニンはそれを抑えました。

急性尿細管壊死は、尿細管の細胞損傷と細胞死を伴う病気ですが、真の細胞壊死は通常わずかです。(Hanif et al. 2023)

白内障と眼球の損傷

次に、職場からの電磁波被曝により、水晶体が混濁し、網膜が損傷したことを示す研究を紹介します。

また、仔牛の携帯基地局からの電磁波被曝により、白内障が増加したことを示す研究を紹介します。

また、ラットの電化製品からの電磁波被曝により、水晶体の活性酸素が増加したことを示唆する研究を紹介します。

電磁波による白内障の仕組み

白内障とは眼球の水晶体が混濁して、物がかすんだりぼやけて見えたりするようになる病気です。

活性酸素が細胞に損傷を与える水準まで増加した状態のことを酸化ストレスといいます。

白内障における水晶体の混濁は酸化ストレスの直接的な結果です。(Vinson 2006)

そして電磁波が活性酸素を増加させることは、数多くの研究によって示されています。

したがって電磁波被曝により活性酸素が増加すると、水晶体の混濁が発生し、白内障につながるものと考えられます。

研究紹介

AURELL and TENGROTH 1973

スウェーデンのレーダーなどマイクロ波機器の試験工場で働く40歳以下の従業員について、ある一定の期間マイクロ波の被曝を受けていると、水晶体の混濁と網膜の損傷が増加しました。

水晶体の混濁の増加

水晶体の混濁の割合が、工場でのマイクロ波の被曝で3倍になりました。

網膜の損傷の増加

網膜の損傷の割合が、工場でのマイクロ波の被曝で7倍になりました。

Hässig et al. 2012

スイスのある酪農場で、携帯基地局が牛舎の近くに設置された後、核白内障の仔牛が大量に生まれたという報告がありました。

調べたところ、そこで生まれた仔牛の核白内障のリスクがスイス平均よりも高いことがわかりました。

白内障の増加

白内障のオッズが、携帯基地局の近隣にある酪農場で4倍になりました。

Balci et al. 2007

局所SAR 1.2 W/kgの携帯電話を飼育ケージの上に設置し、1日40分間着信中にし、子どもに相当する生後6週のメスラットがその電磁波を4週間被曝しました。

すると角膜において活性酸素が増加しました。水晶体においては活性酸素の増加と減少の双方が示唆されました。

抗酸化作用のあるビタミンCの投与は、角膜における被害を抑制しました。

角膜の活性酸素の増加

角膜の脂質過酸化の指標であるマロンジアルデビドが、携帯電話の電磁波被曝で10倍になりました。抗酸化作用のあるビタミンCの投与はそれを抑えました。

MDASODGSH-PxCAT
水晶体の活性酸素の増加

水晶体の脂質過酸化の指標であるマロンジアルデビドが、携帯電話の電磁波被曝で2倍になりました。抗酸化作用のあるビタミンCはそれを抑えました。

MDASODGSH-PxCAT

脂質過酸化の増加と抗酸化活性の減少は活性酸素の増加を意味します。

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石塚 拓磨

石塚 拓磨

北海道函館市在住。大学では情報工学を専攻し、エンジニアとして10年以上の経験があります。
このサイトを通じて少しでも多くの人が電磁波の危険性について気づいていただければ幸いです。

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