電磁波の健康影響を示す多数の研究

がん

 

電磁波被曝により、白血病 (特にリンパ性白血病)、悪性リンパ腫、脳腫瘍、乳がん、精巣がん、肺がん、膵臓がんなど、様々なタイプのがんが増加することが示されています。

近年、これらのがんは増加傾向にあり、電磁波はその要因の一つとして考えられます。

近年の傾向 (※)

5大陸のがん罹患率のデータ (World Health Organization)を元に、世界標準人口を用いて年齢調節して生成

目次All_Pages

3 がんページ3

白血病・悪性リンパ腫

まず、電波塔、高圧線、家電、屋内配線などからの電磁波被曝により、子どもで白血病、中でもリンパ性白血病が、また悪性リンパ腫が増加したことを示す研究を紹介します。

また、職場や携帯電話からの電磁波被曝により、大人で悪性リンパ腫が増加したことを示す研究を紹介します。

リンパ性白血病と悪性リンパ腫

分類

白血病と悪性リンパ腫はともに血液のがんです。

白血病は骨髄において発生し、末梢血に異常な血液細胞が大量に出現するのが特徴です。

悪性リンパ腫はリンパ節において発生し、末梢血に異常な血液細胞はみられず、リンパ節の腫脹をよく伴います。

白血病はがん化した血液細胞の種別により、大きく骨髄性白血病とリンパ性白血病に分けられます。

リンパ性白血病と悪性リンパ腫は、リンパ球またはその前駆体ががん化したという点で同じであり、両者の境界は曖昧です。

例えば急性リンパ性白血病にはリンパ芽球性リンパ腫という別名があり、腫瘍細胞が骨髄で発生している割合が多ければ白血病、そうでなければリンパ腫です。WHOの分類では両者は同じ病気です。(Alaggio et al. 2022)

最近の傾向

先進諸国においては、骨髄性白血病の罹患率に大きな変化はない一方で、リンパ性白血病、悪性リンパ腫の双方が増加傾向にあります (※)。

5大陸のがん罹患率のデータ (World Health Organization)を元に、世界標準人口を用いて年齢調節して生成

骨髄性白血病の年次推移

女性の骨髄性白血病の罹患率に大きな変化は見られません。

男性女性
リンパ性白血病の年次推移

1978年から2008年の30年で、女性のリンパ性白血病の罹患率が豪国で1.8倍、仏国で2.4倍、日本で1.7倍、米国で1.3倍になりました。

男性女性
悪性リンパ腫の年次推移

1978年から2008年の30年で、女性の悪性リンパ腫の罹患率が豪国で1.4倍、仏国で2.3倍、日本で3.7倍、米国で1.6倍になりました。

男性女性
電磁波の関与

そして電磁波被曝により、白血病の中でも特にリンパ性白血病が、また悪性リンパ腫が増加することが示されています。

つまり、リンパ性白血病と悪性リンパ腫が増加しているという傾向を、電磁波が作り出している可能性があります。

研究紹介

Michelozzi 2002

イタリア・ローマの北西端に位置するバチカン放送局は、世界中に送信する非常に強力な放送局です。

この放送局による健康への影響について、住民の懸念が高まっていました。

地域政府は疫学調査を要請し、この研究が着手されました。

調べたところ、15歳未満の子どもについて、自宅から電波塔までの距離が短くなるほど、白血病が増加しました。

また、大人で白血病での死亡の増加もみられました。

白血病の増加

観測された子どもの白血病の症例数が、電波塔から2km圏内では全国平均の6倍でした。

子ども大人
Dolk et al. 1997

当時英ガーディアン紙が、バーミンガムの医師から寄せられた、イングランドのウェスト・ミッドランズ州のサットン・コールドフィールドにあるラジオ・テレビ送信所付近で白血病と悪性リンパ腫が多発しているとの訴えを報道していました。

この訴えを受けて、英国のSmall Area Health Statistics Unitが調査を依頼され、この研究が着手されました。

調べたところ、15歳以上の住民について、自宅からラジオ・テレビ送信所までの距離が短くなるほど、白血病、特にリンパ性白血病が増加しました。

リンパ性白血病の増加

観測された急性リンパ性白血病の症例数が、ラジオ・テレビ送信所から2km圏内では全国平均の4倍でした。

急性白血病慢性リンパ性白血病急性リンパ性白血病
SAVITZ et al. 1988

デンバー都市圏の14歳以下の子どもについて、屋内配線からの電磁波が強くなるほど、小児がんが、特に急性リンパ性白血病と悪性リンパ腫が増加しました。

小児がんの増加

小児がんのオッズが、屋内配線の電磁波が平均0.2μTで2倍になりました。

屋内配線の最弱グループは、電磁波の強さが埋込配線とほぼ同じなので除外。

急性リンパ性白血病と悪性リンパ腫

子どもの急性リンパ性白血病と悪性リンパ腫のオッズが、屋内配線の電磁波が平均0.2μTで3倍になりました。

Olsen et al. 1993

デンマーク全土の15歳未満の子どもについて、高圧線と高圧変電所からの低周波電磁波が強いと、小児がんが増加しました。

小児がんの増加

子どもの白血病・脳腫瘍・悪性リンパ腫のオッズが、高圧線と高圧変電所からの低周波電磁波が0.4μT以上で、それぞれ6倍・6倍・5倍になりました。

Schroeder and Savitz 1997

アメリカの大手電力会社5社の男性従業員について、職場での低周波電磁波の累積被曝量が多いと、悪性リンパ腫が増加しました。

特に過去10-20年の累積被曝量で見た場合に、それが顕著でした。

悪性リンパ腫の増加

悪性リンパ腫の死亡率が、職場での低周波電磁波の過去10-20年の累積被曝量が60-79%の中間層で、3倍になりました。

全期間過去10-20年

また、悪性リンパ腫のうち、高悪性度リンパ腫がさらに増加しました。

こちらも過去10-20年の累積被曝量で見た場合に、それが顕著でした。

高悪性度リンパ腫の増加

高悪性度リンパ腫の死亡率が、職場での低周波電磁波の過去10-20年の累積被曝量が60-79%の中間層で、4倍になりました。

全期間過去10-20年

また、採用年度が5年遅い従業員の間で、さらに悪性リンパ腫が増加しました。

若い従業員の悪性リンパ腫の増加

悪性リンパ腫の死亡率が、職場での低周波電磁波の累積被曝量が70-89%の中間層で、5倍になりました。

Feychting and Alhbom 1993

スウェーデン全土で高圧線の300m圏内に住む16歳以下の子どもについて、自宅から高圧線までの距離が短くなるほど、またその低周波電磁波が強くなるほど、白血病が増加しました。

白血病の増加

子どもの白血病のリスクが、高圧線からの低周波電磁波が0.3μT以上で4倍になりました。

高圧線までの距離電磁波の強さ
Schüz et al. 2001

旧西ドイツ全土の15歳以下の子どもについて、夜間の寝室の低周波電磁波が強くなるほど、急性白血病が増加しました。

急性白血病の増加

子どもの急性白血病のオッズが、夜間の寝室の低周波電磁波が0.4μT以上で5倍になりました。

また、4歳以下の乳幼児の間で、さらに急性白血病が増加しました。

急性白血病の増加 (乳幼児)

乳幼児の急性白血病のオッズが、夜間の寝室の低周波電磁波が0.4μT以上で15倍になりました。

また、15歳以下の子どもについて、誕生からずっと同じ家に住んでいた場合、つまり乳幼児期から電磁波被曝を受けていた場合、さらに急性白血病が増加しました。

急性白血病の増加 (同じ家)

子どもの急性白血病のオッズが、夜間の寝室の低周波電磁波が0.4μT以上で16倍になりました。

Kabuto et al. 2006

東京、名古屋、京都、大阪、北九州都市圏の15歳以下の子どもについて、夜間の寝室の低周波電磁波が強くなると、急性白血病が、特にリンパ性白血病が増加しました。

急性リンパ性白血病の増加

子どもの急性リンパ性白血病のオッズが、夜間の寝室の低周波電磁波が0.4μT以上で5倍になりました。

急性白血病急性リンパ性白血病

WHOの依頼から始まった兜博士の論文はWHOには高く評価されましたが、日本政府からは信用できないとして、無視されました。政府の評価委員会からも、ABC3段階の評価で、12項目すべてがC (良くない) という「最低の評価」を下されました。(Ogino 2019)

兜博士は、「欧米の研究結果と同じような結果だったのに、何故、こんな扱いを受けるのか」と嘆かれました。そして報告書を提出した直後に、リンパ腫で亡くなられました。(Ogino 2019)

奇しくもその死因は、兜博士が研究で電磁波との強い相関を発見した、急性リンパ性白血病と同じリンパ系のがんでした。

電磁波の生体効果の研究には日本では政治的圧力がかかるようです。

Hatch et al. 1998

イリノイ州、インディアナ州、アイオワ州、ミシガン州、ミネソタ州、ニュージャージー州、オハイオ州、ペンシルベニア州、ウィスコンシン州の14歳以下の子どもについて、電化製品の利用年数が長くなるほど、急性リンパ性白血病が増加しました。

急性リンパ性白血病の増加
(家電の利用)

子どもの急性リンパ性白血病のオッズが、テレビゲーム機の利用が3年以上で2倍になりました。

テレビゲーム機アーケードゲーム機ヘッドセット付き音響システムヘアアイロン電気毛布・敷きパッドドライヤー

またテレビの1日の視聴時間が長くなるほど、また視聴距離が短くなるほど、急性リンパ性白血病が増加しました。

急性リンパ性白血病の増加
(テレビの利用)

子どもの急性リンパ性白血病のオッズが、1日6時間超、距離1.2m未満のテレビの視聴で、4倍になりました。

また、妊娠中の女性について、家電を利用していると、生まれた子どもの急性リンパ性白血病が増加しました。

急性リンパ性白血病の増加
(妊娠中の家電の利用)

子どもの急性リンパ性白血病のオッズが、妊娠中の電気毛布・敷きパッドの利用で6割増加しました。

加湿器温熱パッド電気毛布・敷きパッド

また、妊娠中のテレビの視聴距離が短くなるほど、生まれた子どもの急性リンパ性白血病が増加しました。

急性リンパ性白血病の増加
(妊娠中のテレビの利用)

子どもの急性リンパ性白血病のオッズが、妊娠中のテレビの視聴距離が1.2m未満で2倍になりました。

もっとみる (4件)

モスクワシグナル

ここでモスクワシグナルと呼ばれる冷戦時代のエピソードを、Reviews on Environmental Healthという環境保健の分野を扱う季刊の査読付き総説誌から紹介します。

Martínez 2019

1953年から1979年4月まで、モスクワの10階建てのアメリカ大使館が、ソ連政府によってマイクロ波 (※) による攻撃を受けました。

ラジオや携帯電話やWi-Fiなどが利用している周波数帯の高周波電磁波のことです。

マイクロ波の強さは5 μW/cm2程度で、1日9時間照射されたと推定されています。

このマイクロ波攻撃はすぐに「モスクワシグナル」として知られるようになりました。しかし、アメリカ政府は1972年に大使館員の一部に知らせるまで、このことを秘密にしておくことにしました。他の大使館員には1976年まで知らされませんでした。

実際、この出来事が明るみに出たのは1976年の初めになってからで、『タイム』誌に掲載された記事によると、大使館員の多くが深刻な健康問題を抱えてアメリカに帰国し、2人の大使ががんで死亡、3人目は白血病を患っていたとのことです。

1976年6月21日、Lilienfeld博士と彼のチームは米国政府と疫学調査の契約を結び、2年の歳月をかけ、400ページにも及ぶ報告書が発表されました。

医療記録によると、虫垂炎、夢遊病、性病、原虫性腸疾患、良性新生物、神経や末梢神経節の疾患、妊娠・出産・産褥期の合併症が有意に増加しました。

健康アンケートによると、うつ病、易怒性 (イライラ)、集中力の低下、記憶力の低下、目の疾患、乾癬、皮膚疾患、貧血、潰瘍、その他の症状が有意に増加し、その多くは電磁波過敏症と関連していました。

また白血病と乳がんの死亡数の増加がみられました。

白血病、乳がんの増加

モスクワ大使館では、観測された白血病の死亡数が全国平均の3倍、乳がんが5倍でした。

これは統計的には有意ではありませんでしたが、3人目の大使の白血病による死が含まれておらず、乳がんによる死亡数も抑えられている疑いがあります。

また、サンプル数の制限から、リスクが異常に大きくない限り、その増加を有意に検出することはできなかったと、Lilienfeld博士は指摘しました。

1967年に実施された43人を対象にした初期研究では、被曝群では37人のうち20人の染色体に異常が見つかり、無被曝群では7人のうち2人に異常が見られました。 (染色体異常が1.8倍)

1976年に行われた別の調査では、モスクワ大使館の職員の白血球数が、他の外務省職員に比べて多いことが判明しました。


電磁波の生体効果は、少なくとも1950-60年代には、すでに発見されていたということが示唆されます。

電磁波の疾病誘発能 (がんなど) が、対人兵器として利用される危険性は明らかです。

照射されたマイクロ波の強さは5 μW/cm2ですが、これは電波塔や携帯基地局の近隣で被曝する電磁波の強さとさほど変わりません。 (データは5ページ目に記載)

血球数の異常

次に、携帯電話などから電磁波波被曝で、ラットやマウスの赤血球数、血小板数、白血球数に異常がおきることを示した研究を紹介します。

白血病による血球数の異常

白血病においては、血液検査で白血球の数が通常より高いことが多く、赤血球や血小板の数が通常より低くなることが多いです。(healthline)。

白血病は一般的に白血球の数が多くなりますが、白血球の数が少なくなることもあります。(myleukemiateam)。

そして電磁波被曝により、ラットやマウスの赤血球と血小板の数が減少し、白血球の数が増加あるいは減少することが示されています。

研究紹介

Hasan et al. 2021

スマホを飼育ケージの天井に設置して、1日40分か60分着信中にし、子ども・青年に相当する生後6週のオスマウスがその電磁波を60日間被曝しました。

すると1日の被曝時間が長くなるほど、赤血球の数が減少し、白血球の数が増加しました。

赤血球の減少と白血球の増加

赤血球の数が、スマホの電磁波の1日60分の被曝で1割減少しました。

赤血球白血球
Alghamdi and El-Ghazaly 2012

局所SAR 0.49 W/kgの携帯電話を飼育ケージの上に設置して、子ども・青年に相当する生後6週のオスマウスがその電磁波を1日15-60分、2週間被曝しました。

すると1日の被曝時間が長くなるほど、赤血球、血小板が減少し、白血球が増加しました。

また血液塗抹標本において、赤血球の様々な異常がみられました。

赤血球・血小板の減少
と白血球の増加

赤血球の数が、携帯電話の電磁波の1日60分の被曝で2割減少しました。

赤血球血小板白血球

白血球の数が不自然な値になっていますが、記載ミスなのか他に何か理由があるのかは不明です。

赤血球の異常
血液塗抹標本 (被曝無し)
対照群
血液塗抹標本 (1日15分の被曝)
携帯電話 15分
血液塗抹標本 (1日30分の被曝)
携帯電話 30分
血液塗抹標本 (1日45分の被曝)
携帯電話 45分
血液塗抹標本 (1日60分の被曝)
携帯電話 60分

携帯電話の電磁波被曝で赤血球に様々な異常が発生しました。また、被曝時間が長くなるほど、赤血球の数が減っているのが見て取れます。

El-Bediwi et al. 2012

局所SAR 0.96 W/kgの携帯電話の試験機を飼育ケージの中央に設置して、青年に相当する生後3か月のオスラットがその電磁波を1日1時間、3か月または6か月被曝しました。

すると被曝期間が長くなるほど、赤血球、血小板、白血球の数が減少しました。

赤血球・血小板・白血球の減少

赤血球の数が、携帯電話の電磁波の6ヶ月の被曝で5割減少しました。

赤血球血小板白血球
Jelodar et al. 2010

オスの仔ラットが、携帯基地局の電磁波に似せた高周波電磁波を1日5時間、70日間被曝しました。

すると赤血球、血小板、白血球の数が減少しました。

赤血球・血小板・白血球の減少

赤血球の数が、高周波電磁波の被曝で1割減少しました。

赤血球血小板白血球

脳腫瘍

次に、携帯電話・コードレス電話からの電磁波被曝により、大人や子どもで脳腫瘍、特に神経膠腫、なかでも最も悪性な脳腫瘍である膠芽腫、また髄膜種や内耳の腫瘍である聴神経腫瘍が増加したことを示す研究を紹介します。

また、職場からの電磁波波被曝により、脳腫瘍、神経膠腫、膠芽腫が増加したことを示す研究を紹介します。

電磁波吸収量と脳腫瘍

子どもは電磁波が頭全体に吸収される

子どもの頭は大人より小さいため、電磁波のエネルギーをより多く吸収してしまうことが示されています。(Gandhi et al. 1996)

以下の画像は、携帯電話を模した835MHz、0.6Wの電磁波発信器を30°傾けて耳に当てたときの、電磁波エネルギーの吸収量を表す、比吸収率 (SAR) の分布を、子どもと大人で比較したものです。(Gandhi et al. 1996)

大人と異なり、子どもは頭全体に電磁波が吸収されてしまっており、脳平均の電磁波吸収量も数倍になっているのがわかります。

子どもでは脳の両側に腫瘍が発生

大人の携帯電話の利用では、主に使用側において脳腫瘍が増加することが確認されています。

一方、子どもの携帯電話の利用では、使用側だけでなく反対側にまで脳腫瘍が増加してまうことが確認されています。

これは大人と子どもの脳における電磁波吸収量の違いによるものが大きいと考えられます。

携帯電話と膠芽腫

膠芽腫とは?

脳内には脳の情報処理を担うニューロンの他、アストロサイトやオリゴデンドロサイトといった、ニューロンの活動を支えるグリア細胞と呼ばれる細胞が存在します。

このグリア細胞のがんは神経膠腫 (グリオーマ) と呼ばれます。

神経膠腫は脳に発生する最も一般的な悪性腫瘍で、原発性脳腫瘍の80%以上を占めています。(Persaud-Sharma et al. 2017)

その神経膠腫のうち、グレードIVのものを膠芽腫と呼び、5年生存率が10%未満という、最も悪性な脳腫瘍として知られています。

最近の傾向

アメリカとイギリスにおいて、神経膠腫のうち、グレードIVである膠芽腫が増加する一方、グレードIII以下は減少しているという傾向がみられます。

そしてこの傾向は、携帯電話の商用サービス開始とともに始まっています。

米国の神経膠腫の年次推移

1981年から1996年の15年で、神経膠腫のグレードIV (膠芽腫) の罹患率が4割増加、グレードIII以下は逆に3割減少しました。(Li et al. 2018)

英国の神経膠腫の年次推移

1985年から2010年の25年で、神経膠腫のグレードIV (膠芽腫) の新規症例数が6倍、グレードIII以下は逆に6割減少しました。(de Vocht 2016)

携帯電話の関与

そして携帯電話の利用により、グレードIVの神経膠腫 (膠芽腫) のリスクが上昇する一方、グレードI,IIのものは逆に減少するということが示されています。

つまりグレードIVの神経膠腫 (膠芽腫) が増加し、低グレードの神経膠腫が減少しているという傾向を、携帯電話が作り出している可能性があります。

研究紹介

Aydin et al. 2011

デンマーク、スウェーデン、ノルウェー、スイスの19歳以下の子どもについて、携帯電話の利用年数が長くなるほど、また電話時間が長くなるほど、また電話回数が多くなるほど、脳腫瘍が増加しました。

携帯電話の使用側・反対側ともに脳腫瘍の増加がみられました。

脳腫瘍の増加
(利用年数)

子どもの脳腫瘍のオッズが、携帯電話の累積利用年数が4年を超えると、携帯電話の使用側と反対側でともに4倍になりました。

電話回数が週に1回未満。

脳腫瘍の増加
(電話時間)

子どもの脳腫瘍のオッズが、携帯電話の累積電話時間が144時間を超えると、携帯電話の使用側で3倍、反対側で6倍になりました。

電話回数が週に1回未満。

脳腫瘍の増加
(電話回数)

子どもの脳腫瘍のオッズが、携帯電話の累積電話回数が2638回を超えると、携帯電話の利用側で3倍、反対側で5倍になりました。

電話回数が週に1回未満。

Hardell et al. 2006

スウェーデン中央部の20歳以上の住民について、携帯・コードレス電話の利用年数が長くなるほど、悪性脳腫瘍、特に高いグレードの神経膠腫が増加しました。

悪性脳腫瘍の増加

デジタル携帯電話の10年以上の利用で、悪性脳腫瘍のオッズが4倍、高グレードの神経膠腫のオッズが5倍になりました。

携帯電話コードレス

また、悪性脳腫瘍と高グレードの神経膠腫の増加は、携帯電話とコードレス電話の使用側でより大きくなり、反対側では小さくなりました。

悪性脳腫瘍の増加
(使用側と反対側)

携帯電話の1年以上の利用で、携帯電話の使用側で悪性脳腫瘍と高グレードの神経膠腫のオッズが3倍になりました。

携帯電話コードレス
Hardell and Carlberg 2015

スウェーデン全土の18歳以上の住民について、携帯・コードレス電話の利用年数が長くなるほど、神経膠腫が増加しました。

携帯電話の世代別では、第3世代で神経膠腫が最も増加しました。

神経膠腫の増加

神経膠腫のオッズが、利用年数が長くなるほど増加しました。

世代別の神経膠腫の増加

神経膠腫のオッズが、アナログ携帯電話の25年以上の利用で5倍になりました。

アナログ第二世代第三世代コードレス

また、大人になってから携帯電話の利用では使用側に神経膠腫が増加した一方で、未成年の頃からの利用では使用側だけでなく反対側にも神経膠腫が増加しました。

また神経膠腫は、携帯電話を大人になってから初めて使用した場合は、携帯電話の使用側で増加しましたが、未成年ですでに使用していた場合は、使用側だけでなく反対側でも増加しました。

神経膠腫の増加
(携帯電話の使用側)

携帯電話の1年以上の利用で、初使用の年齢を問わず、神経膠腫が携帯電話の使用側に増加しました。

神経膠腫の増加
(携帯電話の反対側)

携帯電話の1年以上の利用で、未成年からの初使用のみ、神経膠腫が携帯電話の反対側に増加しました。

Carlberg and Hardell 2014

スウェーデン全土の18歳以上の膠芽腫 (グレードIVの神経膠腫) 患者の方について、発症までの携帯電話の利用年数が長くなるほど、生存率は低下しました。

死亡ハザードの増加
(利用年数別)

膠芽腫の死亡ハザードが、携帯電話の15年超の利用で2.1倍になりました。

死亡ハザードの増加は、単位時間あたり (例:月あたり) の生存率の減少を意味します。

参考までに、上記の死亡ハザード比を2000-2003年のアメリカの膠芽腫の月別の生存率 (Johnson and O’Neill 2011) に適用したグラフを以下に示します。

生存率の減少
(利用年数別)

膠芽腫の発症までに携帯電話を15年を超えて利用していた場合、5年生存率は5%から0.2%まで減少しました。つまり生存の見込みがほとんど無くなりました。

また、初めて携帯電話を使用した年齢が若くなるほど、膠芽腫の死亡ハザードが増加しました。

死亡ハザードの増加
(初使用年齢別)

神経膠腫の死亡ハザードが、未成年の頃からの携帯電話の利用で2.3倍になりました。

参考までに、上記の死亡ハザード比を2000-2003年のアメリカの膠芽腫の月別の生存率 (Johnson and O’Neill 2011) に適用したグラフを以下に示します。

生存率の減少
(初使用年齢別)

膠芽腫の患者が携帯電話を未成年の頃から利用していた場合、5年生存率は5%から0.1%まで減少しました。つまり生存の見込みがほとんど無くなりました。

膠芽腫とはグレードIVの神経膠腫のことですが、グレードI, IIの神経膠腫の患者は、逆に携帯電話の利用により死亡ハザードが減少しました。

死亡ハザードの減少
(グレードI,IIの神経膠腫)

神経膠腫グレードI, IIの死亡ハザードが、携帯電話の1年以上の利用で4割減少しました。

参考までに、上記の死亡ハザード比を2000-2011年のアメリカのグレードI,IIの神経膠腫の月別の生存率 (Claus et al. 2015) に適用したグラフを以下に示します。

生存率の増加
(グレードI,IIの神経膠腫)

グレードI,IIの神経膠腫の患者が携帯電話を1年以上利用していると、5年生存率は62%から75%まで逆に上昇しています。

Carlberg et al. 2017

スウェーデン全土の18歳以上の住民について、職場での低周波電磁波の累積被曝量が多くなるほど、膠芽腫 (グレードIVの神経膠腫) が増加しました。

特に過去1-14年間の累積被曝量で見た場合に、それが顕著でした。

膠芽腫の増加

膠芽腫のオッズが、職場での低周波電磁波の過去1-14年間の累積被曝量が上位10%で、90%増加しました。

全期間過去1-14年間

一方、グレードI,IIの神経膠腫は逆に減少しました。

グレードI,IIの神経膠腫の減少

グレードI,IIの神経膠腫のオッズが、職場での電磁波被曝で逆に減少しました。

HARDELL et al. 2013

スウェーデン全土の18歳以上の住民について、携帯・コードレス電話の利用年数が長くなるほど、内耳の腫瘍である聴神経腫瘍が増加しました。

聴神経腫瘍の増加

聴神経腫瘍のオッズが、携帯電話の20年超の利用で5倍になりました。

携帯電話コードレス

携帯電話の世代別にみると、第三世代の携帯が最も聴神経腫瘍を増加させました。

世代別の聴神経腫瘍の増加

聴神経腫瘍のオッズが、第三世代の携帯電話の1-5年の利用で4倍になりました。

Coureau et al. 2014

フランスの4県 (ジロンド県、カルヴァドス県、マンシュ県、エロー県) の16歳以上の住民において、携帯電話の利用により、神経膠腫と髄膜種が増加しました。

神経膠腫の増加

神経膠腫のオッズが、携帯電話の利用年数が10年以上で2倍、月平均の電話時間が15時間超で4倍、累積電話時間が896時間以上で3倍になりました。

電話回数が週に1回未満。

髄膜種の増加

髄膜種のオッズが、携帯電話の利用年数が10年以上で2倍、月平均の電話時間が15時間超で2倍、累積電話時間が896時間以上で3倍になりました。

電話回数が週に1回未満。

また、累積電話時間が896時間以上のユーザーをヘビーユーザーとし、携帯電話の利用状況や腫瘍の発生箇所について詳しく調べました。

するとヘビーユーザーは、利用時に携帯電話と近接する側頭葉において、神経膠腫と髄膜種が増加しました。

ヘビーユーザーと腫瘍の発生箇所

ヘビーユーザーの側頭葉において、神経膠腫のオッズが4倍、髄膜種のオッズが8倍になりました。

電話回数が週に1回未満。

またヘビーユーザーが都会限定で携帯電話を使用していると、大幅に神経膠腫が増加しました。

都会のヘビーユーザー

都会でのみで携帯を利用するヘビーユーザーは、神経膠腫のオッズが8倍、髄膜種のオッズが3倍になりました。

電話回数が週に1回未満。

もっとみる (5件)

乳がん

次に、携帯電話、高圧線、電化製品、職場などからの電磁波被曝により、女性で乳がんが増加したことを示す研究を紹介します。

ER陽性/陰性の乳がん

分類

乳がんは女性ホルモンを受け取って増殖するがんと、そうでないがんに分けることができます。これらのホルモンにはエストロゲンとプロゲステロン (黄体ホルモン) の2つがあります。

エストロゲンに対する受容体 (ER) を備えたものをER陽性の乳がん、そうでないものをER陰性の乳がんと言います。

ER陽性の乳がんは、全乳がんの7割を占めています。(Gombos 2019)

最近の傾向

アメリカにおいて、50歳未満の女性ではER陽性の乳がんが増加し、逆にER陰性の乳がんは減少する傾向がみられます。

一方で50歳以上の女性ではER陽性の乳がんに大きな変化がなく、ER陰性の乳がんは減少しているものの、若い女性に比べると減少幅は少ないという傾向がみられます。

50歳未満の乳がんの年次推移

1992年から2008年の16年で、30-49歳の女性ではER陽性の乳がんの罹患率が2割増加、ER陰性は逆に3割減少しました。(Anderson et al. 2011)

50歳以上の乳がんの年次推移

1992年から2008年の16年で、50-84歳の女性ではER陽性の乳がんの罹患率に大きな変化はみられず、ER陰性は1割減少にとどまりました。(Anderson et al. 2011)

電磁波の関与

そして電磁波被曝により、大体50歳未満の女性はER陽性の乳がんが、大体50歳以上の女性は逆にER陰性の乳がんが増加する傾向にあることが示されています。

つまり50歳未満の女性ではER陽性の乳がんが増加し、50歳以上の女性ではER陰性の乳がんの減少幅が少ないという傾向を、電磁波が作り出している可能性があります。

研究紹介

Shih et al. 2020

台湾の医科大学病院の乳腺外科外来で募った20歳超の女性について、睡眠前のスマホの利用時間が長いと、乳がんが増加しました。

特にスマホ中毒の女性の間でそれが顕著でした。

乳がんの増加
(睡眠前に利用)

乳がんのオッズが、スマホの睡眠前の4.5分超の利用で5倍、さらにスマホ中毒の女性の間では7倍になりました。

また、スマホを胸の近くで使っていると、乳がんが増加しました。

乳がんの増加
(胸近くで利用)

乳がんのオッズが、スマホの手持ち利用、つまり胸の近くの利用で2倍になりました。

また、スマホを胸の近くで携帯していると、乳がんが増加しました。

乳がんの増加
(胸近くに携帯)

乳がんのオッズが、スマホを胸近くに携帯していると5倍になりました。

Zhu 2003

テネシー州の3郡 (デビッドソン郡、シェルビー郡、ハミルトン郡) の20-64歳のアフリカ系の女性について、電熱式寝具 (電気毛布、電気敷きパッド、温水ベッド) の利用年数が長くなるほど、乳がんが増加しました。

特に閉経前の若い女性の間でそれが顕著でした。

乳がんの増加

乳がんのオッズが、電熱式寝具の10年超の利用で5倍、閉経前の若い女性では8倍になりました。

Feychting et al. 1998

スウェーデン全土で高圧線の300m圏内に住む16歳以上の女性について、自宅から高圧線までの距離が近くなるほど、高圧線の低周波電磁波が強くなるほど、その累積被曝量が多くなるほど、乳がんが増加しました。

上記の傾向は、主に49歳以下の若い女性の間でみられました。

乳がんの増加

乳がんのリスクが、累積被爆量が3μT-年以上で6割増、49歳以下の女性の間では3倍になりました。

距離電磁波の強さ累積被曝量

また乳がんのうち、ER陽性の乳がんのさらなる増加がみられ、49歳以下の若い方でそれが顕著でした。

ER陽性の乳がんの増加

49歳以下の女性のER陽性の乳がんのリスクが、高圧線の低周波電磁波が0.1μT以上で7倍になりました。

Kliukiene et al. 2003

ノルウェー全土の女性通信士について、職場での高周波および低周波電磁波の累積被曝量が多くなるほど、乳がんが増加しました。

乳がんの増加

乳がんのオッズが、職場での電磁波の累積被曝量が上位33%で2倍になりました。

また、50歳未満の女性の間では、累積被曝量が多くなるほど、ER陽性の乳がんが増加しました。

ER陽性の乳がんの増加

ER陽性の乳がんのオッズが、職場での電磁波の累積被曝量が上位33%で2倍になりました。

一方、50歳以上の女性の間では、累積被曝量が多くなるほど、ER陰性の乳がんが増加しました。

ER陰性の乳がんの増加

ER陰性の乳がんのオッズが、職場での電磁波の累積被曝量が上位33%で8倍になりました。

Demers et al. 1991

米国人口の約15%をカバーするエリアの男性従業員について、職種別に低周波電磁波の被曝可能性を、無し (None)、低い (Lower)、ありそう (Likely)、高周波含めてありそう (Likely Including RF-EMFs)、確実 (Defenite) の5つに分類しました。

すると低周波電磁波の被曝可能性が高くなるほど、男性乳がんが増加しました。

男性乳がんの増加
(被曝可能性)

男性乳がんのオッズが、低周波電磁波の被曝可能性が「確実」で、6倍になりました。

また、低周波電磁波を被曝する職種 (※) の勤務年数が長くなるほど、男性乳がんが増加しました。

被曝可能性が無し (None) 以外

男性乳がんの増加
(勤務年数)

男性乳がんのオッズが、電磁波を被曝する職種の30年以上の勤務で2倍になりました。

もっとみる (3件)

精巣がん

次に、携帯電話、高圧線、電気毛布、職場などからの電磁波被曝により、男性で精巣がんが増加したことを示す研究を紹介します。

セミノーマと非セミノーマ

分類

精巣がんのほどんどは生殖細胞 (※)に由来し、それらの6割はセミノーマで、3割は非セミノーマ、残り1割はその混合型になります。(Singh et al. 2011)

精巣の幹細胞である精原細胞など

セミノーマは生殖細胞ががん化した均一な腫瘍で、始原生殖細胞に類似しています。(Singh et al. 2011)

一方、非セミノーマは極めて不均一な腫瘍で、未分化細胞から高度に分化した細胞まで、さまざまな分化段階を示します。 (Singh et al. 2011)

腫瘍の不均一性は予後と転帰の悪さと関連しており、治療抵抗性と治療失敗の主要な決定因子の一つと考えられています。(Ramón y Cajal et al. 2020)

最近の傾向

先進諸国においては、セミノーマ、非セミノーマの双方が増加傾向にあります。

セミノーマの年次推移

1975年から2000年の25年で、セミノーマの罹患率が豪国で6割 (15年)、仏国で9割、米国で8割増加し、日本では変化がみられません (※)。(Chia et al. 2010)。

非セミノーマの年次推移

1975年から2000年の25年で、セミノーマの罹患率が豪国で6割 (15年)、仏国で11割、米国で4割増加し、日本では変化がみられません (※)。 (Chia et al. 2010)。

日本では精巣がんの増加傾向が2000年以降から始まっています。

電磁波の関与

そして電磁波被曝により、セミノーマと非セミノーマの双方、どちらかといえば非セミノーマが増加する傾向にあることが示されています。

つまり、セミノーマと非セミノーマが増加しているという傾向を、電磁波が作り出している可能性があります。

研究紹介

Stenlund and Floderus 1997

スウェーデン中部の11郡の20-64歳の男性従業員について、職場での低周波電磁波が強くなるほど、精巣がんが増加しました。

特に40歳以下の若い男性の間でそれが顕著でした。

精巣がんの増加

精巣がんのオッズが、職場での低周波電磁波が0.4μT以上で4倍になりました。

全年齢40歳以下

また、40歳以下の若い男性の間では、特に非セミノーマが増加しました。

非セミノーマの増加

非セミノーマのオッズが、職場での低周波電磁波が0.4μT以上で6倍になりました。

Hardell et al. 2006

スウェーデン全土の20-75歳の男性について、携帯電話の利用年数が長くなるほど、精巣がん、特にセミノーマが増加しました。

精巣がんの増加
(利用の長期化)

デジタル携帯電話の5-10年の利用で、精巣がんのオッズが2倍、セミノーマのオッズが4倍になりました。

アナログデジタル

また、スマホを精巣の近くで携帯していると、精巣がんが増加しました。

精巣がんの増加
(精巣近くに携帯)

携帯電話の利用が1年以上で、ズボンのポケットか、腰ベルトのポケットに携帯電話を仕舞っていると、精巣がんのオッズが3-8割増加しました。

Davis and Mostofi 1993

アメリカ中北部の地理的に隣接する郡に所属する2つの警察署で、精巣がんのクラスターが発生しました。

罹患した男性全員が (速度取り締まり用の) レーダーガンを職務で使用しており、また全員が精巣の近くに電源を入れた状態でレーダーガンを日常的に携帯しており、これが唯一の共通の危険因子でした。

レーダーガンは標的に電磁波を照射し、反射して戻ってきた電磁波と元の電磁波との周波数の差から速度を計算します。

調べたところ、当該警察署における精巣がんの症例数が、全国平均に比べて多いことがわかりました。

精巣がんの増加

観測された精巣がんの症例数が、当該警察署では全国平均の7倍でした。

Baumgardt-Elms et al. 2004

ドイツのハンブルクの15-69歳の男性について、高圧線からの低周波電磁波の累積被曝量が増加するほど、精巣がんが増加しました。

特に40歳以下の若い男性でそれが顕著でした。

精巣がんの増加

精巣がんのオッズが、高圧線の低周波電磁波の累積被爆量が多いと7割増加、40歳以下の男性では9割増加しました。

VERREAULT et al. 1990

ワシントン州の東部の20-69歳の男性について、電気毛布の利用年数が長くなるほど、非セミノーマが増加し、逆にセミノーマは減少しました。

非セミノーマの増加

非セミノーマの罹患率が、電気毛布の2年超の利用で8割増加し、セミノーマは逆に2割減少しました。

その他がん

次に、近隣の住民の携帯基地局からの電磁波被曝により、がんが増加したことを示す研究を紹介します。

また、職場や携帯電話などからの電磁波被曝により、肺がん、胃がん、膵臓がん、メラノーマ、前立腺がんなど、様々な種類のがんが増加したことを示す研究を紹介します。

また、両親の職場での電磁波被曝により、子どもの神経芽腫が増加したことを示す研究を紹介します。

研究紹介

Eger et al. 2004

ドイツのバイエルン州オーバーフランケンのナイラの住民について、携帯基地局の近隣に住んでいると、がんが増加しました。

特に居住年数が長いとそれが顕著になりました。

がんの増加

がんのリスクが、携帯基地局の400m圏内に5-10年居住で3倍になりました。

Wolf and Wolf 2004

イスラエルのネタニヤの住民について、携帯基地局の近くに住んでいるとがんが増加しました。

携帯基地局の350m以内の平均の電磁波の強さは、0.53μW/cm2でした。

がんの増加

観測されたがんの症例数が、携帯基地局の350m圏内では全国平均の4倍でした。

Tomenius 1986

ススウェーデンのストックホルム郡 (ストックホルム市とその他22の近隣自治体) の18歳以下の子どもについて、自宅玄関の低周波電磁波が強いと、小児腫瘍が増加しました。

特に定住型物件に住んでいる場合に、つまりそれが顕著でした。これは電磁波被曝の長期化によるリスク増加を示唆します。

小児腫瘍の増加

小児腫瘍のリスクが、自宅玄関の低周波電磁波が0.3μT以上で2倍、特に定住型物件では4倍になりました。

Armstrong et al. 1994

フランスとカナダの電力会社2社の従業員について、職場での低周波電磁波の累積被爆量が多くなるほど、悪性リンパ腫、口唇・口腔・咽頭がん、胃がん、肺がんなどが増加しました。

がんの増加

がんのオッズが、職場での低周波電磁波の累積被曝量が上位10%で、4割増加しました。

悪性リンパ腫の増加

悪性リンパ腫のオッズが、職場での低周波電磁波の累積被曝量が上位10%で、2倍になりました。

口唇・口腔・咽頭がんの増加

口唇・口腔・咽頭がんのオッズが、職場での低周波電磁波の累積被曝量が上位10%で、5倍になりました。

胃がんの増加

胃がんのオッズが、職場での低周波電磁波の累積被曝量が70-90%の中間層で、5倍になりました。

肺がんの増加

肺がんのオッズが、職場での低周波電磁波の累積被曝量が上位10%で、10倍になりました。

De Roos et al. 2001

アメリカおよびカナダ英語圏の病院139院の19歳未満の子どもについて、生誕前2年間の両親の高周波電磁波の職業被曝の可能性を、無し (None)、ありえる (Possible) ・おそらく (Probable) の3つに分類しました。

すると両親、特に母親の高周波電磁波の被曝可能性が高くなるほど、子どもの神経芽腫が増加しました。

神経芽腫の増加

子どもの神経芽腫のオッズが、母親の高周波電磁波の被曝可能性が「おそらく」で、3倍になりました。

父親母親

また、父親の職場での電磁波被曝源ごとに見ると、電動フォークリフト、溶接機、移動無線機からの父親の電磁波被曝で、子どもの神経芽腫の増加がみられました。

神経芽腫の増加

子ども神経芽腫のオッズが、父親の電動フォークリフト・溶接機・移動無線機からの電磁波被曝により、2倍になりました。

Ji et al. 1999

中国の上海の30-74歳の男性従業員について、職場での低周波電磁波が強くなるほど、膵臓がんが増加しました。

膵臓がんの増加

膵臓がんのオッズが、職場での低周波電磁波の強さが「強」で3倍になりました。

また電磁波被曝を受ける職種別にみると、電気技師で膵臓がんが増加し、勤務年数が長くなるほどそれが顕著でした。

膵臓がんの増加 (電気技師)

膵臓がんのオッズが、電気技師の勤務年数が35年以上で9倍になりました。

Hardell et al. 2011

スウェーデン全土の20-77歳の男性について、携帯・コードレス電話の初使用の年齢が若くなるほど、メラノーマが増加しました。

特に使用時に携帯・コードレス電話に接近する頭部・頸部においてそれが顕著でした。

メラノーマの増加

未成年の頃からの携帯・コードレス電話の利用していると、携帯電話の1年以上の利用で、メラノーマのオッズが3倍になりました。

Stang et al. 2001

ドイツ5地域 (ブレーメン、エッセン、ハンブルク、ザールブリュッケン、ザールラント) の住民と、エッセン大学で治療中の患者について、職場での無線機器の利用により、眼内メラノーマが増加しました。

眼内メラノーマの増加

眼内メラノーマのオッズが、職場での無線セットの利用期間が6ヶ月以上で3倍、携帯電話で4倍になりました。

Charles 2003

アメリカの大手電力会社5社の男性従業員について、職場での低周波電磁波の累積被爆量が多くなるほど、前立腺がんが増加しました。

前立腺がんの増加

前立腺がんのオッズが、職場での低周波電磁波の累積被曝量が上位10%で、2倍になりました。

もっとみる (5件)

がんの動物実験

次に、電磁波波被曝により、ラットやマウスにおいて乳がんや皮膚がん、悪性リンパ腫が増加したことを示す研究を紹介します。

研究紹介

Szmigielski et al. 1982

乳がんに罹りやすい性質の、子ども・青年に相当する生後6週のメスマウスが、2.45 GHzの高周波電磁波を全身SAR 2-3 W/kgまたは6-8 W/kgで1日2時間、10ヶ月間被曝しました。

するとSAR値が大きくなるほど、乳がんの発症が早まりました。

乳がん発症の促進

乳がんの発症が、SAR値が大きくなるほど早まりました。

また、子ども・青年に相当する生後6週のオスマウスが、発がん性物質であるベンゾピレンを皮膚に塗布された後に、2.45 GHzの高周波電磁波を全身SAR 2-3 W/kgまたは6-8 W/kgで1日2時間、10ヶ月間被曝しました。

すると電磁波が強くなるほど、皮膚がんの発症が早まりました。

皮膚がん発症の促進 1

皮膚がんの発症が、SAR値が大きくなるほど早まりました。

また、子ども・青年に相当する生後6週のオスマウスが、2.45 GHzの高周波電磁波を全身SAR 2-3W/kgで1日2時間、1ヶ月間または3ヶ月被曝しました。

続いて発がん性物質であるベンゾピレンを皮膚に塗布し、経過観察しました。

すると事前の電磁波の被曝期間が長くなるほど、皮膚がんの発症が早まりました。

皮膚がん発症の促進 2

皮膚がんの発症が、事前の電磁波被曝の期間が長いほど早まりました。

Chou et al. 1992

青年に相当する生後8週のオスラットが、パルス変調した2.45 GHzの高周波電磁波を全身SAR 0.15-0.4 W/kgで1日21.5時間、25ヶ月間被曝しました。

すると原発性のがんが増加しました。

原発性のがんの増加

原発性のがんのオッズが、電磁波被曝で4倍になりました。


また、論文記載データから、転移性のがんの増加度を独自に計算しました。

すると被曝群において転移性のがんの増加がみられ、特に悪性リンパ腫でそれが顕著でした。

転移性のがんの増加

転移性のがんのオッズが、電磁波被曝で3倍になり、悪性リンパ腫では10倍になりました。

もっとみる (3件)

記事の最初に戻る

石塚 拓磨

石塚 拓磨

北海道函館市在住。大学では情報工学を専攻し、エンジニアとして10年以上の経験があります。
このサイトを通じて少しでも多くの人が電磁波の危険性について気づいていただければ幸いです。

health

ja

翻訳中